小粋なくずかご

日々のことをつれづれに

転職時のリファレンス

知り合いが転職することになった。同じ会社に属しているが、友達でも同僚でもなく、知り合いという言葉が最も正しいであろう関係で、知り合いになったのもかなり最近のことである。

 

そんな彼に転職先に提出するリファレンスの回答を依頼された。正直驚いた。どう考えても私は彼のことをほとんど知らない。リファレンスというのは、自分の仕事ぶりをよく理解している、信頼できる人に頼むものではないのか。

 

過去に私もリファレンスを人に依頼したことがある。同じプロジェクトで一緒に苦労した人たちである。自分で依頼して、記載してもらったファイルを自ら転職先に提出するというものだった。転職者本人の目を通るので、客観性の保持という点ではあまり適切とは言えないシステムではあったが、逆に言うとそれだけ信用している人にしか記載してもらうことができないようには思う。

 

一方で、彼の転職先のリファレンスは、登録するとメールで質問票へのリンクが送られてきて、直接回答するものだという。そして、彼はとても急いでいた。転職先も急いでいたようである。

 

本来は正直に自分の考える適格性を伝え、断るべきだったかもしれない。繰り返しになるが、私は彼の仕事をほとんど知らない。でも引き受けてしまった。彼は、よく知っている人には頼みにくいと言っていた。その時よりも彼の言動を見る機会が多くなった今では、ハキハキとした物言いや明るい性格の裏で、あまり成果が残せていなかったのではないかと思う。 

 

このことについては、いまだに気持ち悪さが残っているが、今までとは別の形の組織で一緒に活動していくことになっていたので、断った時のネガティブな影響も考えざるを得なかった。いつか逆に助けてもらうことになるかもしれないという打算がなかったわけではないので、人間関係というのはこういうものだと思うことにする。

 

引き受けた当日に質問票が送られてきた。それまでは、ほとんど知らない人間のキャリアについて自分が何を述べられるのかという悶々とした気持ちを抱えていた。

 

結果的に、私の悩みはあまり意味のないものだったと言える。なぜなら、ほとんどが選択項目で、その人と仕事を一緒にしたことがない、その人の業務はあまり知らない、などの選択肢が用意されていたからである。

 

回答はかなり事実に即して正直に書いた。理由説明などの文章回答欄も、嘘にならない範囲で適切に埋めたと思う。その結果として、私からのリファレンスは何も意味のない他人の回答になってしまった。本人には回答は共有されず、転職先にも回答者は特定されない、という記載を信じるのであれば、私はただ回答者を1人増やしただけである。ただ、最低人数は決まっていたようなので、転職先としては、例え少しであってもその人のために時間を割く人が存在しているという事実自体が大事なのかもしれない。

 

他の人も対応が早かったようで、翌日には彼の内定は決まっていた。彼は現在有休消化を楽しんでいるところである。